EQの話
Emotional intelligence is “the ability to perceive emotions, to access and generate emotions so as to assist thought, to understand emotions and emotional knowledge, and to reflectively regulate emotions so as to promote emotional and intellectual growth” (Mayer & Salovey, 1997).
EQ理論の誕生
EQ理論は1990年に若き米国人心理学者ピーターサロベイ博士(エール大学)、ジョンメイヤー博士(現ニューハンプシャー大学、当時ニューヨーク大学)の二人によって発表された理論です。
我々の知能のなかには感情をコントロールする知性があり、それらはいくつかの能力で構成されている知能群である、という理論です。
彼らの最初の論文である、90年の論文においては、EIモデルを3つの能力構成で説明しました。
- 感情の表現と受容に関わる能力
- 感情の統制管理に関わる能力
- 感情の利用に関わる能力
その後、検討を加え、97年には以下の4つの能力で構成されるモデルに再構築しました。
- 自分や他者の感情を認識する
- 思考を促進するために感情を利用する
- 発生している感情の原因を理解したり、今後の推移を予測する
- その場の行動を適切なものにするために感情を統制したり、今後の適切な行動のために学習する
EQは誰が広めたのか
米国心理学ジャーナリスト、ダニエル・ゴールマンが世界中でベストセラーとなった「EMOTIONAL INTELLIGENCE(1995)」にて新しい知能論を紹介しました。
著書では、大脳生理学の見地から、感情の発生、制御のメカニズムを説くとともに、サロベイとメイヤーの論文(1990)をモチーフにして、感情をコントロールし、人間関係を上手に維持する知性の発揮こそがビジネスや社会生活を豊かに築くキーであると展開しました。(キーワードは「情動のパニック」)
社会生活におけるEmotional Intelligence の活用について、さまざまなシーンでの具体的例を挙げながら、私たちが明日からでも実践しやすいように説明を展開しました。
また、発刊直後、「TIME」が『IQに対峙する新しい能力EQ』という新語をつくり、特集を組みました。
EIよりEQという語感のほうが、イメージしやすい言葉だったのでしょうか、「EQ」という言葉で全米に浸透していきました。
翌年夏には、日本語訳「EQ−心の知能指数」(土屋京子訳、講談社)が発刊されました。
ここでも、EQという言葉を使用したため、日本でも「EQとは、自分の感情をコントロールして、対人関係を上手に維持する知性」として定着していきました。
EQ研究の潮流
提唱者のサロベイ博士やメイヤー博士によると、とくに1960年代、70年代にかけては、人工知能(AI)やスキャナーを使った脳科学の研究が進んだ、と説明しています。
そして、そのあおりをくうかのように心理学の世界においても感情と知能の解釈の見直しが加速度的に進んだと加えています。
一方で、70年代の米国の退廃的世相を生み出した原因をIQベースの教育システムにあったのではないかとして、教育学的見地からも知能論の再構築が議論されました。
そして、このようなさまざまな分野での議論の1つの帰結として、この情動知能(EI)論の提唱となった、と説明しています。
教育学的アプローチ
まずは、1960年代後半から70年代の米国を振り返ってみると、J.F.ケネディ大統領の暗殺以降、ベトナム戦争の泥沼化、ドルの金本位制の崩壊、ウォーターゲート事件等、を背景として
- ヒッピーの出現
- 薬物の乱用
- フリーセックス
- 暴力、銃による悲劇的・刹那的な事件の増加
と退廃化した社会となっていきました。
このような「欲望や衝動のコントロール力の低下」や「倫理観の欠如」といった社会現象は人間の知能のごく一部しかみていないIQ偏重主義の教育システムが原因ではないだろうかと提言し、知能を幅広く捉えるべきという理論−「知性の多重性理論」がハーバード大学教育学部のH.ガードナー博士が提言しました。
余談ですが、私は、この経緯を知ったとき、1997年に中央教育審議会が「心の教育」の必要性を提唱した時の社会背景と重なりました。
知性の多重性理論
H.ガードナー博士は
『今の学校教育は、生徒全員を大学教授に仕立てようとするかのような内容です。そして、そのような狭い基準に合うかどうかだけですべての学生を評価しています。
学校はいい加減に子供をランク付けするのを辞めて、子供達がそれぞれに持って生まれた才能や資質を見つけ、それを伸ばしてやることに力を注ぐべきです。
成功に至る道は何百何千とあるのだし、そのために役立つ能力だって実に多種多様なのですから。』
と述べ、知能には
- 言語知性
- 論理数学的知性
- 空間的知性
- 音楽的知性
- 身体運動的知性
- 心内知性
- 対人知性
といった知能が存在すると展開しました。
サロベイ博士とメイヤー博士はこの「心内知性」「対人知性」(この2つの知性をさして「人格的知性」とよぶ)のなかに情動に関しての知能EIが存在する、と提唱したのです。
なぜ、EQが世界中に広まったのか?
サロベイ博士とメイヤー博士によれば、EQが広まった理由は
- 思考と感情を統合する理論が斬新だったから
- ゴールマンの本が読みやすく、興味を誘う内容だったから
- 誰でもEQを使ってもっと賢くなれると約束されていたから
と分析しています。
EQが発揮できないと何が問題か?
P.ドラッカーによれば21世紀は「協業の時代」といいます。
この協業の時代にEQを使いこなせない人材や組織が増加すると次のような問題が発生しやすくなる、と加えます。
- 自分の感情をコントロールがうまくできない
- 自分を励ます・鼓舞することがうまくできない
- 人間関係を構築でうまくきない
- 人間関係の問題をうまく解決できない
つまり、人と仕事ができない人材や組織が生まれてくることになるのです。
また、EQの発揮が低レベルな人材で構成される組織は
- コミュニケーションミス
- 相互の不信感
- 沈滞ムード
といったものを簡単に招く怖れがあり、生産性の向上が望めない状況が生まれやすい、と加えます。
ハイレベルなEQ発揮をする人のイメージ
D.ゴールマンによると、EQ能力を発揮している人のイメージは、
- 「自分自身を動機付け、挫折してもしぶとく頑張れる人」
- 「衝動をコントロールし、快楽を我慢できる人」
- 「自分の気分をうまく整え、感情の乱れに思考力を阻害されない人」
- 「他人に共感し、希望を維持できる人」
というイメージとなります。
その後のEQの発展
その後、EQの研究や応用はさまざまな形で発展を見せています。
- ビジネス社会では主に企業幹部への研修や組織開発プログラムの構築
- 教育分野ではSEL(Social and Emotional Learning)と称した教育メソッドの確立への模索と実践
- 医療機関や公的サービス機関においてはサービス受益者の感情をベースにした提供のあり方の議論
- マーケティング業界でのエモーショナルマーケティング手法の利用
等々
また、測定ツールもさまざまなものが開発されていきました。
日本においてもいくつかの測定ツールが開発されています。
その後のEQの発展やEQ研究にご興味のある方へ、
「 リーダーシップとEQ 」?
「 EQ検査比較 」?
「 EQフォーラム(学会)と 6セカンズ 世界のEQディレクトリ 」?
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